改善事例

2021.04.12

覆面調査ルポ 近所で有名な「怖い看護師さん」の処遇に悩む

Case22 患者に厳しすぎる看護師に困り果てた小児科・内科院長

 今回は、地方都市の小児科・内科診療所で行った弊社の覆面調査サービス(サロン・ド・クリニック)についてご紹介します。

 院長の強い要望があり実施することになりました。来院した子どもへの看護師の対応が悪く、患児の両親から苦情が来ている状態で、地域でも悪い噂が立っているらしいとのこと。周囲の職員ともうまくコミュニケーションが取れておらず、とてもお困りの様子でした。

 同クリニックは3年前に開業し、その看護師は開業当初から勤務を続けていました。院長は、診療所の立ち上げから働き続けていることに感謝している部分はあると言います。しかし、ちょっと注意するだけでかなりの剣幕で逆ギレされるので、院長は問題意識を持ちながらもきちんとした介入ができずにいました。

 もちろん周りのスタッフも注意できず、問題は放置されたまま。そこで、私たちに第三者の視点で看護師の対応を見てほしいということで、調査を依頼されました。


受付の対応、サービスは申し分なし
 
 覆面調査員A子は早速、クリニックを訪問しました。外観はおしゃれでスタイリッシュで、明るい春の日差しが降り注ぐ建物の様子は本当に医療機関なのかと驚くほど。中に入ると温かく優しい印象のインテリアが配され、清潔感があり、快適で安心できる雰囲気でした。

 受診に際しては予約システムが導入されているので、登録すれば少ない待ち時間で受診できます。予約時間の11分前にはリマインダーのメールが届き、気が利いていて素晴らしいと感じました。

 受付スタッフの対応はとても感じが良く、明るく優しい雰囲気で「こんにちは」と笑顔で挨拶をしてくださいました。初診だと伝えると、両手で保険証を受け取り、アイコンタクトも長く、終始丁寧な応対。子ども連れにとっても安心感のある対応でした。
 

今回の診療所のスコア

100点中56点でした。


処置室から低くドスのきいた声が…
 
 それまでの良い印象が一気に変わったのは、診察室に入ってからです。A子が隣の処置スペースの様子をうかがっていると、低いドスのきいた声で「動くと治らないよ!」と、子どもが少し動いただけでも押さえつけている看護師の姿が目に入ってきました。子どもはにらみつけられ、怖がっていることが表情から読み取れました。一緒にいた母親も、驚きと困惑の表情でした。

 院長が悩んでいる問題の看護師がこの人であることは、すぐに分かりました。その看護師は他の場面でも、同僚がちょっとした記載ミスをするだけで、相当厳しい口調で叱っていました。

 患者や同僚に厳しく接することが必要な局面もあるとは思いますが、この看護師の対応は行き過ぎであるように見えました。院長にその旨を伝えたところ、「やはりそうですか……。第三者の目で見ても気になるんですね。実は近所のママさんたちの間でも有名で、『あの看護師さんには当たりたくない』『あの人がいるから受診できない』という声があると、子育て中の職員から聞きました」とのこと。

 その上、患者だけでなく、スタッフにも相当厳しく接しているため、「あの人がいるなら、仕事を続けられない」と退職したスタッフがいて、今いるスタッフのうちの数人は「これ以上彼女と一緒に働くことができない」と言っている状態だと教えてくれました。

 しかも、「ツイッターで患者や私の悪口を書いているといううわさもあるんです」と院長。ツイッターの件は、証拠がつかめなかったので効果的な指導ができていないとのこと。患者や同僚への態度については、開院当初は口頭で注意していたものの全く改善しないので、院長も根負けした状態で、最近は注意することもなくなってしまったと打ち明けてくれました。


細かい行動ルールも明文化を
 
 この問題への解決策として、弊社では、患者対応をはじめ職場のルールをきちんと明文化することを提案しました。

 「患者には丁寧に優しく対応する」「職員同士は尊重しあう」「口コミサイトやSNSで患者や医院の情報を漏らさない」など、細かい内容で、文章にするまでもないと思われがちなルールも文章にすることを提案しました。

 こういったルールを就業規則の服務規律として明記しておくと、この先、問題職員を解雇したいと思ったときに有利に働きますし、入職時にきちんと説明しておけば、非常識な職員による問題行動の抑止にもなります。

 このクリニックでは早速、就業規則の服務規律としてルールを明文化することにしました。その後、職員全員に集まってもらい、趣旨を説明し、内容をしっかり読み上げて理解を促しました。当日は、スタッフの皆さんが素直な態度と気持ちで受け入れてくださいました。

 しかし約1カ月が経過したころ、問題の看護師がツイッターで院長や患者の悪口を書くという事件が発生。今度は、しっかり証拠を押さえることができました。患者が特定されないようにぼかして書いていましたが、いずれにせよ許されることではありません。それを見つけた院長の怒りは頂点に達し、「どうやったら解雇できるのか?」との相談を受けました。

 私は事情をお聞きした上で、今の状態だけですぐに解雇するのは難しいとお話しし、このことが就業規則上のルールに違反することを改めて本人に伝えるべきだと申し上げました。

 ツイッターの文面を印刷して、院長は「こういうことをしてはならない」と厳しく、冷静に伝えました。すると彼女は、うつむいてうなだれた様子で黙って聞いていました。

 そして次の日、彼女は退職願を携えて出勤しました。院長は、人員不足になることは痛手だけれど、これ以上、彼女にいてもらうことの方が良くないと判断し、退職願を受領しました。

 このケースのように、覆面調査を通じて医院の様々な問題が明らかになり、解決に向けた取り組みを進める途上で、問題を引き起こした職員が去っていくことは少なくありません。

 問題のある職員を解雇したいとおっしゃる院長は多いのですが、規律を作り、それを徹底していくことで本人が居づらくなり、自分から辞めていくことは多々あります。一時的な人手不足にはなりますが、そのような場合、組織風土の改革が必ず良い方向に進んでいっていることも事実です。

 職員の問題を放っておいてよいことはありません。自院で下記のチェックポイントの事柄を実践できているかを確認しつつ、対応が難しい場合は外部の意見を取り入れ早めに対処することが、問題の肥大化を防ぐ有効な手段となるでしょう。
 
〔今回のチェックポイント〕
☐職場のルールが明確である
☐職場のルールは就業規則の服務規律に明文化して記入してある
☐職場のルールを違反したときには、院長がきちんと伝えている
 
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