改善事例

2021.02.22

覆面調査ルポ 乱雑な院内、片付けられない院長と職員たち

Case15 受付周りが雑然とした内科クリニック

 今回は、ある内科クリニックの事例です。40歳代院長からご依頼がありました。クリニックは1年前に開業したばかり。接遇と院内の環境をチェックしてほしいということで、弊社の覆面調査サービス(サロン・ド・クリニック)を依頼されました。


施設は新しいのに院内の環境が…
 
 早速、覆面調査員A子が訪れると、髪の色が明るく後れ毛が垂れ下がった受付の女性が目に入りました。特に挨拶もなく、「初診なのですが…」と伝えると、「保険証をお願いしまあっすう~!」と妙に高いトーンで声を掛けられました。

 ふと受付の中に目をやると、ペンやはさみ、ホチキス、修正ペンがいくつも転がっていて、その向こうにはカルテか何か書類が山積みになっていました。「散らかっているな」と感じたA子は、待合室を見回してみました。すると、ポスターの角が剥がれて丸まっていたり、斜めに張られていたり、中には破れているものさえありました。

 また雑誌も座席の上に放置されていたり、本棚にあっても倒れたままで山積みになり、雑誌はめくれ、破れ、ボロボロになっていました。

 さらに、検査室では、別の患者がエコー検査で使用したタオルがベッドの下に山積みになっているのが丸見えで、不潔な印象を受けました。

 当日の検査や処置に関して、説明の資料をいただけたのはとても親切だと感じましたが、保管してあるラックにバラバラに入っており、資料を出すのがとても大変そうでした。

 職員の接遇にもいろいろ問題はあったのですが、それ以前にこのクリニックは、院内の乱雑な雰囲気のために患者の心象が悪くなり、診療内容は良くても患者が離れて行ってしまいそうな状態でした。


院長夫人が離れ雰囲気が変わる
 
 院長にお話を伺ってみると、きれい好きな院長の奥様が事務長として勤務していたときは清潔だったのですが、奥様が出産を機に院内に顔を出さなくなってから、クリニック全体がどんどん汚く雑然となり、このままでは「あっという間にクリニックの汚さが定着して患者が離れて行ってしまうのでは」と不安になっていたとのことでした。

 
今回の診療所のスコア

100点中36点でした。


 
 そこで、まず整理整頓に取り掛かることにしました。言うまでもなく「整理」とは要るものと要らないものを分けて、要らないものは廃棄することで、「整頓」とは取り出しやすいように収納することです。

 受付周りの物品の整理から始めました。すると、はさみ3本、のり10個(未使用のものを含む)、ホチキス3個、ボールペン25本、鉛筆2ダース、修正テープ5個……と、驚くほど多くの物品が出てきました。

 院長に確認すると、ボールペンなどはスタッフがすぐ紛失してしまい、必要なときにないことがあるので、その都度注文してしまいどんどん増えているのだそうです。その他の物品についても、「まとめ買いがお得」という売り文句を見て、受付担当者がつい多めに買ってしまっていることもありました。

 受付周りは収納スペースがほとんどないため、これらの在庫も受付デスクの上に置かれてしまい、ますます雑然となっていたのです。

 そこで、今後は在庫の数は原則1つと決め、最後の1つを使うときにオーダーするように変更しました。現在の在庫については、スタッフに持ち帰ってもらったりすることにしました。またボールペンなど筆記具については、各自、名前を記入するようにしました。すると、紛失はほとんどなくなりました。


作業効率を重視した整理整頓
 
 整理をする際は、要るものの中でも「片付ける場所が決まっているもの」と「片付ける場所が決まっていないもの」があります。場所が決まっていないものは、まずは収納場所を決めなければなりません。誰がいつ、どのような頻度でどの場所で使用するのかを考慮して、収納場所を決めていくのがポイントです。

 収納場所が決まったら、誰が見ても分かるように、入っているものをラベルプリンターなどで記入しておくとよいでしょう。きれいに収納した状態を撮影して引き出しに貼っておくのも、効果的です。

 また、ラックにファイルを収納する際は、必ずインデックスをつけ、一目で分かるようにすると取り出しやすいとアドバイスしたところ、すぐに実践に移し、「作業効率がとても良くなった」とのことでした。

 使用済みのタオルなどは、患者の視界に入るのを防ぐため、ペダル式でふたが開閉するごみ箱を「使用済みタオル入れ」として、衛生的にも問題なく、保管できるようにしました。


クリニックにおける真実の瞬間とは
 
 スカンジナビア航空CEOのヤン・カールソンが執筆した『真実の瞬間』(ダイヤモンド社)をご存じでしょうか。彼のリーダーシップにより、同社の経営はV字回復したことが知られています。

 彼が飛行機に乗り込んだとき、機内食用のテーブルを引き出した瞬間、それが汚れていることに気が付きました。そのとき彼がふと思ったことは、「お客様はテーブル、トレーが汚れているのを見て、『ジェット・エンジンも汚い』と思うかもしれない」ということでした。そして「テーブル」から連想して、お客様はその会社の全てを判断すると考えたのです。

 そこで顧客との接点を全てピックアップして、それを「真実の瞬間」と呼び、一つひとつを改善することにより、業績を回復させていきました。

 クリニックの場合、きちんと片付いていなかったり、乱雑に置かれていると、「診療行為や診療器具も不潔ではないか、雑に取り扱っているのではないか」と思われてしまう可能性があります。

 クリニックにおける「真実の瞬間」とは、どのような瞬間でしょうか。例えば、予約の電話、アクセスのお問い合わせなどの電話応対、受付での挨拶、保険証の預かり、待合室のご案内、診察のお呼び出し、診察室での挨拶、診察、検査、退室、会計、お帰りの際の挨拶――など、患者応対の場面だけでもざっとこれだけ多くの「瞬間」があります。その瞬間に、患者の目に入るものをきちんと整えるだけで、とても気持ちの良い空間になります。またそれらが整うことは、患者にとって医療行為そのものへの安心感につながります。

 組織再建の3原則、「場を清める」「礼を正す」「時を守る」のうち「場を清める」ことは、働くスタッフにとっても心の安定をもたらします。整理整頓をするだけで、働く人の気持ちが上向きになります。

 読者の皆さんも、「組織にけじめが感じられない」「何となくだらけた雰囲気になっている」と感じたら、ぜひ整理整頓に取り組んでみてください。
 

〔整理整頓チェックリスト〕
☐毎日使わないものがデスク上に出ていないか
☐物品などの収納場所は決まっているか
☐今日、使用しない在庫はないか
☐何がどこにあるか、誰でも分かるようにしてあるか
☐取り出しやすいように収納されているか
 
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