改善事例

2022.08.23

覆面調査ルポ 業務効率向上の中、浮き彫りになった接遇の課題

Case54 患者増により苦情が増えてきた皮膚科クリニック

 今回は、同じ地域の広い土地に移転開業したばかりの皮膚科クリニックです。前院長が30年ほど前に開業しましたが、現院長が代替わりで受け継ぎ、保険診療でない治療や施術を必要に応じて行うようになりました。

 それに伴い患者がどんどん増え、常勤医2人体制でも患者の待ち時間が長くなる状況が発生してしまい、苦情が急増しているとのことでした。そこで、スタッフのオペレーションの状況や接遇をチェックしてほしいと、覆面調査の依頼がありました。


直接並んだ順番とインターネット予約の順番が別と知らず



 今回、クリニックを訪問したのは覆面調査員A子です。すでに夕方でしたが、初診でもインターネットで順番予約が取れるとの記載をウェブサイトで見つけました。A子は早速、予約しようとしたのですが、診察券番号を要求されてしまい、初診の登録画面が表示されません。10分ほどあれこれやってみたのですが、結局、初診登録も順番予約もできなかったので、電話をかけることにしました。

 電話応対されたのは明るい声で感じの良い方です。初診登録がインターネットでできない旨を伝えると、今の時間だと順番予約はもう取れないとのことでした。確かに、診察時間は18時30分まで、インターネット順番予約は18時までとの記載がウェブサイトにありました。しかし、診察時間の案内とは別のところに書かれていました。

 予約の仕方がわかりにくかったことへのおわびの言葉があり、電話の対応はとても感じがよいものでした。A子が翌日はできるだけ早く受診したいと伝えると、インターネット順番予約より、朝、並んだほうがよいとの説明がありました。

 翌日、診療開始時間の20分ほど前に行くと、すでに15人ほど並んでいました。A子は並びながらスマートフォンでウェブサイトを見ていると、インターネットの順番予約が約1時間前から始まっていたことに気づきました。慌てて予約をしましたが80番でした。並んだ方がよいという昨日の電話での案内は、不適切だったのではないかと感じてしまいました。

 診察開始の5分前に受け付けが始まり、A子は受付スタッフに、並んだ方がよいと電話で案内されたのに、インターネット予約で80番だったことを伝えました。すると「直接クリニックで並んでいただいた場合には別枠の順番があるのですが、インターネット予約で取ってしまった場合はそちらの順番になってしまいます」との説明でした。強い不満を覚えたA子は、「あらかじめその旨をきちんと説明してほしかったです。今日はこの後、別の予定があって、早くから並んだのですから」と伝えました。

 しかし受付スタッフは、「でも、インターネットでお取りいただくと、その順番になってしまうのです」と説明されました。A子は納得いかない気持ちでしたが、特に要求したわけでもないのに、「昨日のご案内のこともありますので、今回は並んでいただいた順番でお取りします」と話されました。インターネットの順番予約は破棄され、30番になりました。A子はその取り扱いに納得したものの、こういった場合はおわびした上で説明を結論の後に回すと、不快な印象を与えずに済みます。

 例えば、次のように説明します。「ご案内が不足しており、申し訳ございません【おわび】。インターネットの順番予約をされたということですが、当日並んだ方の順番は別枠でありますので、今回はそちらに変更いたします【結論】。次回からは並ばれた場合には、インターネットの順番予約の必要はございません。どうぞご安心ください【説明】」。

 

今回の診療所のスコア

100点中48点でした。


副作用はないとの説明だったが、痛みで不安を覚える



 診察まで小一時間は待ったものの、診察は丁寧で、忙しい中でも患者の疑問にきちんと答えていて、患者の気持ちに寄り添った対応ができていると感じました。A子は自身の悩みについて、いろいろと相談することができました。

 すると、院長からある施術の提案を受けました。A子が副作用がないかを確認したところ、「そういうことはありません。大丈夫ですよ」との説明でした。そこで、安心してその施術を受けることにしました。

 その日のうちに施術を受けたところ、A子が想像していたより痛みが強かったので、驚きました。副作用はないという話でしたが、これほどの痛みがあるのにと半信半疑になりました。

 施術後、看護師から「今日はメイクをしないように」と初めて伝えられました。A子は、これからメイクをして別の仕事に行く予定だったので、とても驚きました。A子は何度か確認し、「アイメイクのみなら可」という回答を引き出せたので、なんとか次の仕事に行くことができました。

 施術が終わると、パウダールームに案内されました。パウダールームで準備を終えると、その次にどうすればいいのかわからず、近くを通りかかったスタッフに聞きました。すると、会計の用意を待つ部屋に案内されました。10分以上待ってから呼ばれ、診察券と料金の明細書が渡されました。「あちらの自動精算機でお支払いください」とだけ言われ、自動精算機で支払いを済ませました。ところが、「今日はこれで終了です」という案内がなかったので、帰ってしまっていいのかと少し不安になりました。また、出口がわからず、精算を済ませた別の患者についていき、外に出ることができました。

 通常の待合スペースのほかにパウダールームがあること、施術前後の患者の動線が分かれていることは、化粧を落とした顔を他人に見られるのに抵抗がある患者への配慮があり、とても良いと思います。ただ、患者が迷ったり不安になったりしないよう、案内表示や流れを示した説明用シートなどを準備し、声かけするようにすればよいと感じました。

 A子は施術当日の夜から顔がむくみ始め、翌々日には目元もむくんでしまい、人相が少し変わってしまいました。むくんだのが顔だったので、日常生活において大きな負担感を覚えました。1週間ほどでむくみは消え、施術の効果は得られましたが、A子はこういった副作用はあらかじめ、もっと詳細に説明すべきだと感じました。そうすれば、自身の都合に合わせて予約日時を決められたからです。


機器やシステムを上手に活用し、患者満足度を高める



 覆面調査の結果を踏まえ、患者へのホスピタリティーを発揮するために、「物」、「人」、「機能」の3つの要素に分けて院長にアドバイスをしました。

「物」については、順番予約システムや自動精算機の導入、最新の医療機器の使用だけでなく、患者動線への配慮もなされています。

「人」については、スタッフはみなさん一生懸命で誠実な印象でした。挨拶をきちんとするだけでなく、笑顔が感じられる人も多く、高いポテンシャルを備えている方が多いと感じました。

「機能」については、改善すべき点があるように思われました。せっかく順番予約システムを導入しているのに、事前の案内が不足していたり、順番の説明が適切でなかったりしていました。自動精算機の導入により業務効率は向上したものの、患者へのお見送りの機会を失ってしまい、印象が悪くなっていました。自動精算機を導入している医療機関では、支払いの案内が患者との最後の接点であると認識することが重要です。例えば、次のようにするとよいでしょう。

(1)診察終了を伝える
「こちらで本日の施術(診察)は以上となります」

(2)自動精算機を案内する
「会計はあちらの自動精算機をご利用ください」

(3)ねぎらい・心配りの言葉をかける
「お疲れさまでございました」
(副反応が予想されるときは)「もし赤みや腫れなど気になる症状がありましたら、お気軽に電話でご相談ください」

(4)お見送りの挨拶とお辞儀
「どうぞお大事になさってくださいませ」と言ってからお辞儀

 このように最後に区切りの挨拶をしっかり行うと、中途半端な印象を払拭できます。

 これらの課題は、業務手順の見直しとマニュアル化、説明補助資料の作成などで対応できるとアドバイスしました。注意事項をもれなく記載した資料を作成した上で、スタッフはそれを見ながら説明し、説明後は患者に手渡しすることにより、患者が不安になったり、迷ったりしなくなるでしょう。さらに、医師とスタッフで役割を分担し、患者に注意事項などを不足することなく説明できるよう、資料を準備することを提案しました。

 患者に安心して治療・施術を受けていただくために、クリニックの業務を「物」「人」「機能」の3つの要素から見直してみると、課題がより明確になり、ホスピタリティーを高められると思います。

 

〔今回のチェックポイント〕
□ 患者の不安や疑問を解消するような説明ができていますか
□ 業務効率の向上が接遇の低下につながっていませんか
□ 院内の設備やサービス(機能)を十分に生かせていますか

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