改善事例

2021.10.04

覆面調査ルポ 患者さんに見せるマスク姿、注意すべき点は?

Case40 マスク姿の職員が冷たい印象のクリニック

 今回は、地方都市にある脳神経外科診療が有名な有床診療所です。「近隣にホテルのような内装の競合クリニックができた」「建物の老朽化もあって、患者数が減ってきた」「『職員が暗い』といったよくない評判が広がっているらしい」などと、経営状況を心配した院長から覆面調査の依頼がありました。これまで患者との間で目立ったトラブルはないのですが、患者離れが起き始めているような気がしているとのことでした。

 早速、覆面調査員A子は調査に出かけました。

 クリニックは駅の近くにあり、非常に便利な立地です。駐車場も完備されており、車でも安心して行けるので好アクセスといえるでしょう。

 建物は「新しい」というわけではありませんが、高級感がありました。ただし、受付奥のドアが開けっ放しで、事務所の中の様子が丸見えになっており、ちぐはぐな感じがしました。


マスクをして笑顔もないと・・・
 
 A子がクリニックの玄関を入ると、マスクを着用したスタッフが事務所からちょうど出てきました。ぶつかりそうになり、A子はスタッフと目が合ったのですが、スタッフは何も言わずに去っていきました。A子は無視をされたような気がして、「感じが悪い」と思ったそうです。

 受付では、スタッフ全員がマスクをしていました。覆面調査に行ったのは、まだ新型コロナウイルスが流行する前ですが、医療機関の職員がマスクを着用していること自体に違和感はありません。ただ、A子を対応している間、受付職員には笑顔アイコンタクトもなかったので、冷たい印象を受けたそうです。

 マスクをしていると、目元でしか表情を伝えられないので、患者から見ると何を考えているのか分かりにくいものです。人は目元、口元を観察して、相手の感情を読み取ろうとします。マスクによって口元が隠されていると、たとえ笑っていてもそれが相手に伝わりにくくなります。結果、「相手の感情を読み取りづらい」「何を考えているのか分からない」という印象になり、患者にとっては不安な存在になってしまいます。

 
今回の診療所のスコア


100点中50点でした。


マスク着用時の印象を客観的に知る
 
 昨年末、大手スーパーで従業員のマスク着用を原則禁止にするという通達が出たことで、賛否両論が巻き起こりました。このような通達が出た背景は、従業員が必要ないのにマスクをしていると、お客さんとのコミュニケーションが円滑に取れないと会社側が考えたためです。

※このスーパーでは、かぜによる咳やくしゃみ、鼻水などの症状がある場合や、花粉、アレルギー、その他健康上の理由から着用する場合は認めていました。また、食品加工に携わる人はマスク着用が義務とされていました。現在は、新型コロナウイルス感染症対策で着用が認められています。

 確かに、マスクを着用していると、
 
1. 感情が伝わりにくい
2. 声が伝わりにくい
3. 不健康なイメージを与える
4. 人と関わりたくないという印象を与える
 
といった、コミュニケーションを取る上でのデメリットが生じます。

 人と人とが応対する仕事では、相手に与える印象が重要視されます。一方、医療機関のスタッフの多くは感染予防のためにマスクを付けているはずです。だからこそ、自分がマスクを着用したときに相手に与える印象を客観的に理解しておくことが大切になるのです。

 その上で、マスクを着用する際は、目元で笑顔を伝えるよう心がけたり、大きめな声でゆっくりとハキハキ話すことを、より意識するとよいでしょう。


マスクのマナーを再確認しよう
 
 今回の事例を通じて、マスクをめぐるマナーについても考えてみましょう。

 A子が番号を呼ばれて診察室に入ると、そこにいた看護師はマスクを着用していませんでした。新型コロナウイルス感染症も発生していない時期ですので、マスクを付けていないこと自体は問題ありません。ただ、この看護師は、何度もくしゃみをしていました。「花粉症なのかな?」と気になってしまうほどの大きなくしゃみを連発していたそうですが、マスクを着用していないこともあり、A子は「もしかぜをうつされたら嫌だ」と不快に思ったそうです。

 この看護師には、「花粉症だから大丈夫」という考えもあったのかもしれませんが、それは自分本位の考え方です。接遇では、「相手への思いやり」の観点で考えることが大切で、相手が不快か不快ではないかという相手本位の発想をする必要があります。例えば、自分がかぜを引いてせきがゴホゴホ出ていたら、相手への感染を防ぐためにマスクをすべきです。反対に、かぜや花粉症でもなく、インフルエンザなどの感染症も流行していない時期に、例えば「今朝、寝坊して、化粧が適当だったから」「何となく安心するから」といった理由だけでマスクを着用するのは、自分本位な考え方になります。

 他にも、マスク着用のマナー違反で多いのが、「鼻マスク」です。口元はマスクで覆われているのですが、鼻が出たままになっている状態です。鼻もしっかり覆わないと、くしゃみをしたら飛沫が発生しますし、マスク表面にくっついたウイルスを手で触り、鼻に入れてしまいやすい状態になっています。

 次に「顎マスク」。せっかくマスクをしているのに、人と話をするときにマスクを下げ、顎を覆い、鼻と口を全開にすることをいいます。飛沫感染を防ぐという本来の目的であれば、話すときにこそ、マスクをしていることが重要です。「顎マスク」は、見た目も不潔な印象になりますので、マスクをずらすくらいなら、外した方がよいでしょう。

 新型コロナウイルスが広がりだしてからは、電車の中でマスクをせずに咳をすると白い目で見られるという話をよく聞きます。マスクには予防効果はほとんどないといいますが、咳による飛沫を周囲に飛ばさない、つまり自分に症状があるときに相手への感染を防ぐには有効です。また、医療機関では咳症状のある方も受診しますので、感染防止の観点でのマスク着用は合理的な判断でしょう。むしろこのご時世では、医療従事者がマスクをしていないと患者さんからの印象が悪くなることも少なくありません(にもかかわらず、マスクの供給不足が続いているというのが悩ましいところですが・・・・・・)。マスクや感染防止策に関する患者さんからのナーバスな反応も増えつつあると聞きます。無用なクレームを防ぐためにも、しばらくはスタッフのマスクの付け方などのチェックを定期的に行うようにしましょう。

 今回の覆面調査では、「患者からどう見られているか」といったスタッフの意識が全体的に不足しているように感じました。マスクのことだけでなく、「おはようございます」「お大事になさってください」といった挨拶がありませんでしたし、ユニホームの上に着用しているカーディガンの袖が伸びて毛玉がたくさん付いていたり、ユニホームの下にレギンスとキャラクターが描かれた靴下をはくなど、身だしなみがおろそかになっていました。

 そこで、調査結果を受けたフィードバック研修では、「第一印象の重要性」と「印象を決定する要素」について丁寧にお話ししました。また、相手の視点に立つこと、自分の与える印象を客観視することの重要性について、説明させていただきました。

 経営陣が当たり前だと思っていることでも、人によっては知らないことがあります。マスクの着用法1つとっても、「言わなくても当たり前」と考えず、当たり前のことこそ丁寧に伝えていくことが重要だといえます。

 
〔今回のチェックポイント〕
☐マスクをする理由を理解していますか。
☐マスクの着用が与える印象を知っていますか。
☐マスクは正しく着用していますか。
 
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