改善事例

2021.05.17

覆面調査ルポ 休みがちな職員の影響で負担増大、院長も苦慮

Case26 忙しすぎてゆとりがない耳鼻咽喉科クリニック

 今回は、耳鼻咽喉科クリニックに対して行った覆面調査の事例をご紹介します。院長は、40代の女性医師。受付スタッフの対応が冷たいと患者さんに指摘をされたことがきっかけで、弊社に依頼がありました。

 受付スタッフがいつも忙しそうで、「話しかけても『あっ、そうですか』と言うだけで、きちんと話を聞いてくれない」という苦情があったり、「診察券や金銭の返却の際に、いつも急かされるので辛い」というご意見があったりするとのことでした。

 早速、覆面調査員A子が訪ねていきました。医院の自動ドアが開き、中に入りましたが、A子がいることに、一切気づいている素振りはありません。カウンターの前に立っていても、すぐ目の前に座っている受付スタッフは何やらバタバタと作業をしていて、A子の方を見ることもありません。A子が「あの……初診なんですが」と言うと、初めて面倒くさそうに顔を上げました。挨拶はありませんでした。


「話しかけられたくない」気持ちが伝わる
 
 「保険証お願いします」と言われたので、差し出そうとしたら、立て続けに「問診票書いてください」と言われ、保険証を出す前に問診票を渡されました。慌てて問診票を受け取り保険証をお渡しすると、「はあっ」とため息をついて、受付の裏の方に走るように入っていきました。

 対応中も常に顔を伏せたままで、自分の作業が滞るのを避けるため、できるだけ患者さんに話しかけられたくないという気持ちが伝わってきました。

 髪の毛が長い方は束ねていたのですが、おくれ毛が多く、まとめた毛先からもピンピンと毛先が出ていて、髪を振り乱して必死に作業をしているように見えました。またスタッフのチームワークもほとんど見られません。個々が忙しそうにしているのは伝わってくるのですが、連携して声をかけ合い、効率的に動く様子ではなく、黙々と自分の作業をしているという印象でした。

 全体的に、人が足りていないのか、忙しくて不機嫌な様子が伝わってきました。

 
今回の診療所のスコア

100点中34点でした。


 調査が終了し、院長に報告をしたところ、院長は「そうなんですよね。その日、受付スタッフが2人も急に休んでしまったので、受付を1人で担当する必要があって大変だったんです」と語り始めました。

 1人はお子様の病気で休み、もう1人は本人の体調不良だったそうです。院長は、「2人とも当日欠勤が多くて困るんです。当日は、休みを取っていた別のパートスタッフに急きょ出勤してもらいました。覆面調査にお越しになったのが10時頃でしたが、パート職員が出てきたのは10時半だったので、調査の時は本当に人手が足りなくて丁寧な対応ができなかったと思います」とおっしゃいました。

 体調不良を理由に欠勤が多いというパートスタッフは、「風邪気味で…」「おなかが痛くて…」と電話連絡し、2週間に1~2回は当日連絡で欠勤しているとのこと。院長は「お大事にしてください。今日は休んで早く治してくださいねー」などと伝えるのですが、責任感が足りないというか、どうしたらもっと体調管理して出勤できるのか、風邪気味なら薬を飲んで出勤することはできないのかなと正直思うとのことで、対応に苦慮されていました。


放置すると同僚のモチベーションに影響
 
 さて、こういう場合、本人への関わりと同僚への関わりの両方が必要です。あまり休んでばかりで、それをそのままにしておくと、同僚のモチベーションに響きます。

 まず、ご本人に対しては、一度面談をしていただくとよいと思います。「休みがちなのは、何か大きな病気があるのではないかと心配している」「そもそもの出勤日を減らした方がよいのか?」というスタンスで臨むとよいでしょう。

 もし、このスタンスで確認して、体調不良が軽微なものと分かれば、やはり責任感を醸成することは必要だと思います。「急に休むと、他の人に負担をかけることになる」「どのように健康管理をすれば急に休まずに出られるようになるか、一緒に考えてみよう」などと伝えてみることをお勧めします。

 また、当のスタッフが必要で欠かせない存在であることも併せて伝えるとよいと思います。休むことが多いスタッフは「どうせ勤務時間も短いし、仕事もそんなに難しくないから、私がいなくても大丈夫でしょ」と甘く見ているケースが多々見られ、その雰囲気が職場内でも感じられたりします。たとえ、そのスタッフの出勤日や勤務時間が少なくても「あなただからお願いしている仕事があるのです」と、職場の中で一定の責任を負っている事実をしっかり個別に伝えることで、勤務態度が変化していくことが期待できます。

 一方で他のスタッフに対しては、休みがちな職員が欠勤するたびに、「休むことは仕方がないけれど、職場に出てこられるよう健康管理をすることは重要である」旨をきちんと話してください。そして、休んだ人の仕事をカバーしてくれたことに対し、ねぎらいの言葉をかけるとよいでしょう。そうすることで、「体調不良で休んでいけないわけではないけれど、頻繁に当日欠勤することは良しとしていない」という姿勢が、スタッフの皆さんに伝わります。急に休まれると、困るのは他のスタッフたちなので、何の説明もないと「先生が甘やかしている」とか「ひいきしている」と思われてしまうかもしれません。

 もし、休まなければならない重大な事情があるようなら、同僚たちに理解してもらうためにも、どこまで話してよいかを本人に確認してみてください。その上で、スタッフの皆さんに開示して理解してもらうとよいかと思います。

 結局、今回紹介したクリニックでは、休みがちのスタッフと個人面談を実施。普段休む際の電話連絡では、そんなにシビアな印象は受けませんでしたが、実は本人にとっては体調面で仕事が負担になっていたようで、無理をして働いていたことが分かりました。院長は休みがちなスタッフと一緒に、過去半年間の当日欠勤の記録を確認。体調の具体的状況を丁寧に聞き取り、やり取りを重ねた結果、スタッフは自らの意思で退職することになりました。

 他の同僚たちは、それまで「あの人のせいで忙しくなって……」と何となくギスギスしたところがあったものの、本人の口から事情を聞いて同情する部分があったようで、「それならゆっくり休んでもらった方がよい」と口にしていました。

 院長が個別面談により状況を把握し、周囲のスタッフたちにもきちんとした説明を行ったことで、事態打開への道が開けました。今では新たに入職したスタッフが活躍し、元から在籍しているスタッフたちは、以前よりは心にゆとりを持って働けるようになったとのことです。

 
〔今回のチェックポイント〕
☐毎月1回以上、急に休むスタッフにきちんと介入していますか?
☐急にスタッフが休んだ場合の対策はありますか?
☐健康管理の重要性は、何度も伝えていますか?
 
日経メディカルオンライン掲載記事はこちら
研修メニューはこちら

PAGETOP