改善事例

2021.05.10

覆面調査ルポ ビデオに映った自分の接遇に衝撃を受けた職員

Case25  高級感あふれる産婦人科医院の「ちぐはぐ感」

 今回、調査対象となったのは産婦人科クリニックです。近年、ホテルのような豪華なお部屋にフルコースディナーなど、医療機関とは思えないサービスを提供する産院が増えています。そうしたハード面やサービスが素晴らしいと評判の産院から、覆面調査のご依頼を受けました。

 依頼の内容としては、「患者から施設について褒めていただいたり、助産師への感謝の言葉をいただくことは多いものの、受付職員などの対応は可もなく不可もなくという状況のようなので、その原因を突き止めてほしい」とのことでした。

 早速、弊社の覆面調査員A子は調査に向かいました。外観は全く医療機関とは思えません。まるでレストランのような雰囲気です。お城を思わせるような瀟洒(しょうしゃ)な洋館で、とてもおしゃれで落ち着いた印象でした。

 入り口から中に入ると高級ホテルのような内装で、荘厳な雰囲気の受付が見えました。そこにいるスタッフの方々はきちんと制服を着こなし、身だしなみは整っています。しかし、残念ながら、あまり笑顔が感じられません。やや冷たい印象でした。

 検診で予約してあることを伝えると「はい」と答えた後、「あちらにお掛けになってお待ちください」とソファを勧められました。

 言葉遣いは適切でしたが、アイコンタクトも笑顔もなかったので事務的な印象です。「あちら」とご案内をしているのに、手で指し示すこともなく、どちらに行くべきか少し迷いました。また、終始うつむいており、猫背になっていることも気になりました。

 スタッフの1人が、ソファに掛けて待っている患者に呼ばれ、そちらに歩いて行ったのですが、ペタペタと左右に揺れながら歩いており、キビキビと動いているようには見えませんでした。どちらかというと、ダラダラとしているように見えました。

 診察室の医師や看護師(助産師)の対応は、親切で温かいのですが、「患者様」という言い方とその他の言葉のバランスが、やや不自然な印象でした。例えば「○○様 こっちへ来てくださいね~」というようなちぐはぐな感じです。「○○様、こちらへお越しくださいませ」と言えば、院内の雰囲気や、○○様という言葉とマッチすると思います。

 施設の見た目が良いことは、クリニックの印象を決める上で重要な要素といえましょう。この産院の場合、そこはクリアされています。ただ、スタッフの見た目という点では、残念ながら良いとはいえません。

 

今回の診療所のスコア

100点中59点でした。


 具体的には、まずは表情です。柔らかく自然で安心感を与える微笑みがあれば、ハード面とのバランスが良くなり、患者に居心地の良さを与えることができるでしょう。

 次に身だしなみです。今回の産院は身だしなみにはあまり問題がなかったようですが、身だしなみは1人が良くないだけで、全体の印象を悪くしてしまうことがありますので、注意が必要です。

 医療機関における身だしなみの3原則は 「清潔」「調和」「機能的」といえますが、高級感を前面に出す産院のようなケースでは、民間企業で採用されている身だしなみのポイントでもある「上品さ」が加わると、よりふさわしいでしょう。髪型やメイクを決めるときに、上品に見えるかどうかというポイントを踏まえると、少々野暮ったかった印象が格段に向上することは少なくありません。

 そして洗練されているかどうか、分かれ道にもなるポイントは立ち居振る舞いです。立ち居振る舞いは一朝一夕では身に付きません。育った環境による部分もありますが、自分自身で毎日、意識し続けることにより身に付けることもできます。このように実践するのが難しいからこそ、立ち居振る舞いが美しいと、洗練された印象を与えることができるのです。

 残念ながら、現代の日本で立ち居振る舞いについて学んだことのある人はあまり多くありません。ポイントは次ページの通りですので、ぜひ実践してみてください。


【立ち居振る舞いのポイント】
 

1.正しい姿勢を身に付ける
姿勢には気持ちや人柄、生き方が表れます。姿勢が良いと、きちんとした印象を持たれ、信頼感や安心感につながります。背筋をピンと伸ばすと、気持ちも前向きになりますし、すべての所作に気品が漂うようになります。

<基本の立ち方>
(1)足は揃えて立つ
(2)重心を土踏まずに置く
(3)足の上に腰、その上に肩、その上に首が載るというイメージを思い描く
(4)頭の上から1本の糸で吊られているようなイメージで立つ
(臍下3cmくらいに力を入れて、腰から上はまっすぐ上に引き上げる)
(5)肩の力を抜き顎を引いて、腕は自然に垂らし、手は指を揃えて前で軽く重ねる

<座り方>
(1)浅く腰掛ける。背筋を伸ばし、手は前に重ねる
(2)足は、少し斜めにし、流したほうのつま先を少し出すときれいに見える
(3)ひざ頭はつける

2.動作の最後をゆっくりにする
物を置く時、渡す時、ドアを閉める時、お辞儀をする時など、動作に余韻を残すように、最後を静かにゆっくりすると丁寧な印象を与えます。

3.動作にメリハリをつける
所作にメリハリがあると、キビキビとした印象を与えます。1つの動作が終わらないうちに、次の動作に移らないようにします。

4.指を揃える
様々な所作の時、指を揃えるだけで立ち居振る舞い全体がとても美しくなります。
物を扱う際も、少し注意するだけで、驚くほど印象は変わるものです。

<診察券等をお渡しするとき>
(1)受け取った後に持ち直さなくてもよいように、診察券の正面を相手に向ける
(2)診察券のような小さな物も片手を添えるようにして、両手で渡す
(3)相手の受け取りやすい位置に差し出す

<問診票などを受け取るとき>
(1)バインダーであれば両手で、小さな問診票であったとしても片手を添えるようにして両手で受け取る
(2)わしづかみにしたり、引っ張ったりしない

5.視線に注意する
視線が定まらず、キョロキョロしていると、落ち着きのない印象です。また上目づかいは疑っているか自信がない印象、下目づかいは傲慢な印象を与えます。「目は心の窓」といわれるように、感情を映し出します。

 
 今回訪問した産院においても、患者応対の様子をビデオに撮影し、実際に自分の姿を見た上で、立ち居振る舞いのレッスンを行いました。これまで意識していなかったので、自分の姿を見たときは、衝撃的だったようですが、これをきっかけに少しずつ、立ち居振る舞いに関する意識が向上しているようです。

 ビデオを撮影するというと、かなりどよめきましたが、緊張しながらも真面目に取り組んでくれました。みんなでそのビデオを見た後、感想を聞いたところ「自分では笑顔のつもりだけれど、全然笑顔が出ていなくて驚きました」「声が小さすぎて何を言っているのかわからないことに気づきました。患者さんによく聞き返される理由がわかりました」「こんなにいつもガニ股とは思わなかったです」「猫背だと老けてみえることに驚きました」「相手の目を見ているつもりだけれど、全然見ていないことに気づきました」など、とても衝撃的だったようです。

 まさに百聞は一見に如かずという言葉がぴったり当てはまるような体験だったようで、その後スタッフの立ち居振る舞いに対する意識が大きく変化しました。いつも見られているという意識で仕事に取り組むように、だんだん変化していったのです。

 月に1回行っている接遇の勉強会においても、ロールプレイの様子をビデオに撮影し、自らの姿を振り返るようになりました。スタッフ一人ひとりが、ぐっとあか抜けた雰囲気になり、将来にも役立つ立ち居振る舞いが身についたようです。

 院長は、スタッフたちが自分のクリニックに勤めることにより、ワンランク上のスキルを身につけられたことを喜んでいました。また退職したスタッフが、このクリニックに勤めることで、後の人生に役立つスキルを習得できたと院長に感謝の気持ちを伝えてくれたそうです。

 
〔スタッフの立ち居振る舞いチェック〕
☐背筋は伸びていますか?
☐両手で受け渡しをしていますか?
☐指は揃っていますか?
☐忙しいとドタバタし、余裕があるとダラダラしていませんか?
 
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