改善事例

2021.11.15

覆面調査ルポ ウィズコロナ時代に確認したい「電話のマナー」

Case43 電話応対への苦情が寄せられた皮膚科診療所

 今回はある地方都市の皮膚科クリニックからの覆面調査の依頼です。開業して半年、やっと院内のオペレーションが落ち着いてきたところなのですが、電話応対に対する苦情が寄せられているとのご相談がありました。苦情の主は院長の奥様のご友人で、「説明が不親切で分かりにくい」「話し方が暗い」「自信がないようで不安になる」と言われてしまったようです。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行してからというもの、この診療所では電話で患者から診療時間や診療内容について問い合わせを受ける機会が増えたようです。また、特例で可能になった電話による診療にも一時期チャレンジしました。その際も、事務スタッフがまず患者さんから電話を受け、診療の予約などを調整していたそうです。

 院長としても、事務スタッフの話し方が少し元気がないことが気がかりでした。そこで、今回は電話応対に限定して、特別に覆面調査を行うことにしました。全ての受付職員の対応を調査するため、各スタッフのシフトに合わせて、曜日と時間を変えて計4回調査を実施しました。


出だしから早口で聞き取れず…
 
 早速、覆面調査員A子がクリニックに電話をかけてみました。しかし、なかなか電話に出てくれません。5回以上、コール音が鳴ってから、やっと担当者が電話に出ました。担当者は「◯◯◯◯です」と早口で、恐らくクリニック名をおっしゃったのだとは思いますが、聞き取ることができませんでした。

 その後、クリニックで行っている施術や予約の方法、また交通アクセスなどについて尋ねました。受付スタッフの声のトーンは低めで、元気がなく、暗い印象でした。「レーザー以外にはどんな施術がありますか」とお聞きしても「色々ありますよ」とおっしゃるのみで、具体的な案内をしてくださいませんでした。

 交通アクセスについて聞いた際、「公共交通機関で向かおうと思うのですが」と伝えたところ、「ちょっと駅から遠いですから難しいですね~。バスがあるんですけど、本数が少なくて使えるかどうか……」と言い、黙り込んでしまいました。できればバスの時刻表を案内したり、タクシーの乗り場を伝えるなど、もう一歩、患者の気持ちに寄り添った声かけをしていただきたかったです。駐車場の有無なども、こちらからお聞きして初めて答えていただく形だったので、どうしても不安な気持ちが増してしまいました。案内すべき内容はあらかじめ準備しておき、患者から聞かれる前に先回りしてお伝えできると、安心感を与えることができます。

 
今回の診療所のスコア


100点中38点でした。


電話での話し方を意識することが大事
 
 まずは、電話を取る場面です。コール音が5回以上鳴ってから、電話に出て、早口でクリニック名を告げられました。一般的なビジネスマナーでは、できるだけコール音が3回鳴る間に出ることが推奨されています。コール音が5回以上鳴っていたのであれば、「お待たせいたしました」と言ってから、クリニック名を名乗るようにするとよいでしょう。

 電話は顔の見えない相手との会話ですので、声のトーン、高低、スピードによって第一印象が決まります。最初にお待たせしてしまうと、それだけで印象がマイナスからのスタートになりますし、今回の事例のように早口でクリニック名が聞き取れないとなると、電話をかけた患者を不安にさせてしまい、印象が良くありません。

 声のトーンや高さについては「意識すること」が欠かせません。皆さんも友人に電話をかけたとき、「機嫌が悪いのではないか」と不安に思ったことはありませんか。対面では問題のない話し方でも、電話を通すと暗い印象になるものなのです。電話を受ける際は、姿勢は正しく、笑顔で受けることを心掛けてください。また、声の出だしは、(ドレミファソラシド)の「ソ」ぐらいのトーンの明るい声を意識するとよいでしょう。

 患者が初めてクリニックに電話をかけるときは、少なからず緊張し、不安も抱えています。その気持ちに寄り添い、少しでも安心していただけるように心掛けながら応対すると、印象は大きく変化すると思います。

 そのほかにも、電話での話し方で語尾が伸びたり、上がったりするところが印象に残りました。そうした話し方は、稚拙なイメージを与えがちです。気になる人にとっては、不快な気持ちが芽生えてしまうので、気をつけてください。自身の話し方の癖を知るためにも、電話応対の声を録音して振り返りを行うととても効果的です。ロールプレイによる練習を行うことも有効ですので、ぜひ、実践してみてください。


スケッチブックで敬語のトレーニング
 
 敬語や丁寧語については、知識がないと使用することができませんので、短時間でもよいのでインプットをする時間を設けるとよいと思います。

 私どもでは、スケッチブックを利用した敬語のトレーニング方法をお勧めしています。


敬語トレーニングブックの作成方法

(1)B4サイズのスケッチブックを1冊準備します。
(2)最初のページにぶっきらぼうな表現を書きます。
<例>「ここに書いてください」
(3)そのページをめくった所に、丁寧な表現に改善したものを記入します。
<例>「恐れ入りますが、こちらにご記入いただけますでしょうか」
(4)クリニックでよく使う表現をどんどん記入していき、スケッチブックの全ページに表現を記入できたらできあがりです。

 
敬語トレーニングブックの使用方法

(1)1人のスタッフが、敬語トレーニングブックを持って前に立ちます。
(2)ぶっきらぼうな表現を見せて、丁寧な表現を考えてもらいます。
(3)ランダムに当てて、発表してもらいます。
(4)正解であれば、皆で拍手をします。
(5)分からない場合や違う場合は、全員で3回唱和します。

 
 3分間あれば、複数の言葉を覚えることができます。ゲーム感覚で取り組むことができて、楽しいので、朝礼やミーティングの短い時間を利用して、少しずつ取り組むことをお勧めします。以下に表現の例を記載します(表2)。

 

表2 敬語トレーニングブックの記載例

 
 敬語は学んで使って、初めて身に付くものです。特に電話では表情が伝わらないので、声のトーンや言葉遣い、話し方の重要性が増します。機会を見付けて、電話での接遇改善に取り組むと、患者の第一印象が飛躍的に高まり、かかりつけ医として選ばれやすくなると思います。

 
〔電話応対のチェックポイント〕
☐姿勢は正しく、笑顔で話していますか。
☐出だしは、(ドレミファソラシドの)「ソ」のトーンにしていますか。
☐抑揚が過剰だったり、事務的になっていたりしませんか。
☐早口ではありませんか。
☐語尾上げ・語尾伸ばしはありませんか。
☐適切な敬語を使えていますか。
 
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